【現在執筆中です。最終回ではなく、あと2回あります…】
1931年1月中旬。ポルトガル・リスボン。
日に日に勢力を伸ばしてきたファシスト集団はポルトガルの伝統的価値観とカトリック信仰への回帰を主張した。
彼らは口々に叫ぶ。
「ポルトガルの伝統をぶち壊しているもの、それは共産主義と植民地軍だ!」
「税金を下げろ! 社会保障を充実させろ!」
「政府は弱腰だ! いまや、ポルトガルが植民地を支配するのではない! 植民地がポルトガルを支配しているありさまだ! 植民地軍を国軍に統合し、ポルトガルが植民地を支配するという大原則を確かにせねばならない!」
喝采が周囲から湧き上がる。
彼らのデモ行進は街路をねりあるくさまは黒い蛇のようだった…。
騒然とするリスボン市内から離れた植民地軍の研究所の一室。
「いまは姿勢制御の研究で手一杯だ」
ゴダードが紳士たちを前に説明をする。
「液体燃料エンジンの開発もようやくめどがついたところなんだ…。開発スケジュールはとうに示しただろう? なんでそんなに急ぐんだ?」
「ゴダードさん」紳士の一人が話し始める。「この技術は各国が注目するところとなりました」
「ああ。そうだろうな。アメリカじゃあ、見向きもされなかったが…」
「ドイツでは、国防軍支援のもと、クンメルスドルフの研究所でロケットの開発が進められているようです」
「へえ、ドイツも宇宙を目指すつもりなのかい? ポルトガルも負けられない、ということか」
「いえ…ドイツが考えていることは少し違うようなのです」
「違う?」ゴダードは怪訝な顔をした。「それ以外にこのロケットを何に使って言うんだ?」
「クンメルスドルフというのは、ドイツ陸軍兵器試験場のことだ」
突然、奥に座る人物…いつも周りから「将軍」と呼ばれている人物…がするどい口調で言い放つ。
「兵器試験場?」
「どうやらドイツはロケットを兵器利用しようとしているらしいのだよ…」
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